かえる291の読書日誌

本好き、コーヒー好き、妄想好きなかえるの読書の足跡

「フレデリック ‐ちょっと かわった のねずみの はなし‐ 」 ~ちょっと かわった のねずみが輝く世界~

 

 幼い頃、母からイソップ童話「アリとキリギリス」の話をよく聞かされた。   

 「アリが一生懸命働いているとき遊んでばかりいたから、寒い冬になって、キリギリスはひどい目にあったんだよ。」

 吹雪の中、凍えて死んでいくキリギリスの姿を想像し、ちょっと悲しい気持ちになった。

 

 私の祖父母は専業農家だった。

 深い雪に閉ざされる冬に備え、朝から晩まで田畑を耕し続けた祖父母の姿を見て育った母は、アリの姿に祖父母を重ねていたのかもしれない。

 

 この絵本に出てくる野ねずみのフレデリックも、みんなが働いている中、じっとひなたぼっこしたり、遠くを眺めたり、眠っていたり…。

フレデリック―ちょっとかわったのねずみのはなし

フレデリック―ちょっとかわったのねずみのはなし

 

 「フレデリック、どうして きみは はたらかないの?」

「さむくて くらい ふゆの ひの ために、ぼくは おひさまの ひかりを あつめてるんだ。」

「こんどは なに してるんだい、フレデリック?」

「いろを あつめてるのさ。ふゆは はいいろだからね。」 

「ゆめでも みてるのかい、フレデリック。」

「ちがうよ、ぼくは ことばを あつめてるんだ。

 ふゆは ながいから、はなしの たねも つきて しまうもの。」 

 働かないフレデリックに、なかまの野ねずみたちは、少し腹を立てる。

 でも、灰色の冬がやってくると、フレデリックが集めておいた、おひさまの光やいろいろな色がみんなに魔法をかける。

 集めた言葉を使って話すフレデリックは、舞台の上の俳優みたい。

 最後はみんな、拍手かっさい!

「おどろいたなあ、フレデリック。きみって しじんじゃ ないか!」

 最後のページで赤くなって照れるフレデリックの表情がなんともかわいい。

 

 私たちのまわりでも時々見かける、ちょっと困った野ねずみ(極端な例だとフーテンの寅さんとか…)。

 でも、実は素敵な魔法をもっているのかも…。

 そんな野ねずみが大切にされる世の中であることを願わずにはいられない。

 

 この本、こんど小学校1年生になるSちゃんにプレゼントしよう。  

 Sちゃん、フレデリックと仲良しになってくれるかな?

 

 では、また次回。ごきげんよう。