「七つの会議」 ~負の感情がもたらす悲劇~
父が図書館で池井戸潤の「七つの会議」を借りてきた。
父は小説しか読まない。図書館で本を選ぶ基準は、“直木賞受賞作家”の作品であること。芥川賞受賞作家は興味がないらしい。すごくシンプル。
池井戸潤の本は読んだことがないが、たまたま図書館にあったから借りたとのこと。ちょうど文庫化されたばかりで、今、すごく売れている本という認識は全くないらしい。
おとうさん、ナイス!
池井戸潤といえば、「下町ロケット」で直木賞受賞。その作品は多数ドラマ化され、ヒットを連発している人気作家。でも、実は、私も読んだことがなかったので、父が読み終わった後で読んでみることに…。
すごい!
圧倒的な筆力で、息つく隙さえ与えない場面展開に、一気に読み終える。
正直、これほど骨太な読み応えのある内容を期待していなかったので(←とても失礼)、うれしい誤算。
舞台は大手総合電機の子会社。
当初はパワハラか?と思われた問題が、会社だけでなくグループ全体の存続にかかわる不正にまで発展していく。
問題を明らかにし、やり直すチャンスは何度かあったにもかかわらず、隠蔽され温存されていく不正。過酷を極めるノルマがそもそもの原因だが、恨み・嫉妬・自己保身といった人間のマイナスの感情が問題をより複雑にし、深層化していく。
人間の弱さゆえに大きくなっていく悲劇。
途中出てくる、こんなセリフがむなしく感じられる。
仕事っちゅうのは、金儲けじゃない。人の助けになることじゃ。人が喜ぶ顔を見るのは楽しいもんじゃけ。そうすりゃあ、金は後からついてくる。客を大事にせん商売は滅びる
正論ではあっても、現実の世界では幻想にすぎないんだろうか…。
暗澹たる気持ちになったが、著者は最後に救いを用意してくれていた。
今大好きな作家がひとり増えた。
では、また次回。ごきげんよう。